東京地方裁判所 平成8年(行ウ)107号 判決
原告
大脇建設株式会社
右代表者代表取締役
加耒伸夫
原告訴訟代理人弁護士
秋山昭八
同
吉成直人
被告
東京都港都税事務所長 菅野国雄
被告指定代理人
江原勲
同
北岡康典
同
矢野照雄
同
鈴木朗
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 法五八五条以下に規定されている特別土地保有税は、土地の取得及び保有に伴う費用を増大させることにより、土地の投機的な取得を抑制するとともに、土地の供給を促進することを目的として創設されたものであるが、投機目的で取得され、保有されている土地か否かの判断困難であることなどから、当初は、当該土地の利用の有無を問わず一律に課税されることになっていたものである。しかしながら、その後、既に社会通念上相当程度の水準の利用がされ、最終的な需要に供されていると認められるような土地についてまで特別土地保有税を課することは適当でないという考慮から、かかる場合には、いったん発生した納税義務を免除することとし、昭和五三年の改正により法六〇三条の二の納税義務の免除制度が設けられたものである。
右のような免除制度創設の経緯からすれば、未利用の土地はもとより将来の売買を見越して仮の利用に供されているにすぎない土地についても免除の対象とすべきではないことになるが、具体的な個々の土地について、最終的な需要に供されているか、将来の売買を見越して仮の利用に供されているか、将来の売買を見越して仮の利用に供されているにすぎないのかの判断は困難であるから、その具体的運用における不公平を避けるべく、法六〇三条の二第一項は、前者であることが明確なもののみを対象とすることにして外形的、客観的基準を導入し、かつ、個別具体的に課税庁の認定にかからせる方法によることとしたものである。そして、前記第二の二1(二)ないし(四)に摘示したとおり、建物等に係る恒久性の要件及び特定施設に係る恒久性の要件について、施行令五四条の四七がより具体的な要件を規定し、また、その判定は、基準日の現況によるものとしているのであるから、当該土地が法六〇三条の二第一項の免除対象土地に該当するか否かは、専ら基準日における当該土地の現況に基づいて、法及び施行令が規定する要件に該当するかどうかを客観的に判断すべきものと解するのが相当である。
二 建物等に係る恒久性の要件該当性について
1 前記第二の二2(一)及び(三)摘示のとおり、原告は、建物の建築及び譲渡を含む本件売買契約によって本件土地1を取得したが、基準日である平成四年一月一日時点では、本件土地1上に建物等があったわけではないし、その建築工事が始まっていたわけでもないから、客観的、外形的に判断すれば、本件土地1が建物等に係る恒久性の要件を充たす土地であるということはできない。
2 原告は、基準日において土地上の建物の建築工事が未だ着手されていなかったとしても、最終的な需要に供されることが明確な場合には、免除の対象とすべきであると主張する。
しかしながら、既に説示したとおり、法は、免除対象土地に該当するか否かを基準日における現況により判定するものとしているのであるから、基準日において当該土地上に何ら建物等の建築工事の着手がみられないような場合には、仮に、基準日において建物等に係る恒久性の要件を充たすような建物等を建築する具体的な計画が進行中であり、所有者が投機目的で当該土地を保有するものではないことが窺えるとしても、基準日における外形的事実に基づく客観的判断によって納税義務者間の不公平を避けようとした免除制度の趣旨からすれば、当該土地が免除対象土地に該当するということはできないといわざるを得ない。したがって、原告の右主張を採用することはできない。
三 特定施設に係る恒久性の要件の該当性について
1 前記第二の二2(三)摘示のとおり、基準日である平成四年一月一日時点では、本件土地1は、本件土地2がアスファルト舗装され駐車区画が明確に区分されていたのと異なって、砂利敷きのままであった。そして、法六〇三条の二第一項の免除の要件として当該土地を含む周辺の地域における計画的な土地利用に適合することを規定していることからすると、施行令五四条の四七第二項に規定する「通常必要とされる整備の水準」に達しているかどうかは、施設の種類、用途、態様のみならずその土地の存する地域の状況等に基づいて判断すべきであるところ、〔証拠略〕によれば、本件各土地の周辺地域の駐車場がアスファルトないしコンクリート舗装され、駐車区画も明確にされていることが認められ、また、東京都特別区内の多くの賃貸用駐車場がアスファルトあるいはコンクリート等によって舗装されていることは容易に窺うことができる。そうすると、本件土地1の整備状況は、同項に規定する「通常必要とされる整備の水準と同程度の水準に達しているもの」ということはできず、特定施設に係る恒久性の要件を充たす土地であるということはできない。
2 原告は、駐車場としての必要な整備状況として、アスファルトないしコンクリート舗装までを要求する根拠がない旨を主張する。
しかしながら、平面式駐車場の場合には、立体式駐車場等と比較すると、その利用が最終的な需要に供されたものとしての利用なのか、将来の売買を見越して仮の利用に供されているにすぎないのかの判断に困難をきたす場合が多いと考えられるところ、そのような場合には、前述した免除制度の趣旨等からすれば、免除対象土地とすべきではないことにならざるを得ないが、アスファルトあるいはコンクリート等による舗装がされ、駐車区画も明確に区分されていれば、駐車場として利用することが外形的、客観的に明らかになるから、舗装の有無等を判断の重要な要素として考慮することには合理性があるというべきである。そして、前述のとおり、本件土地1の存する地域においては、アスファルトないしコンクリート舗装をし、駐車区画を明確に区分している駐車場が多数であると認められるから、基準日において砂利敷きであった本件土地1について、「通常必要とされる整備の水準」に達していないとした被告の判断に違法はなく、原告の右主張を採用することはできない。
なお、原告は、本件各土地のように一体的に賃貸用駐車場として利用している土地については、一部を免除対象土地とし、一部を免除対象土地としないことは許されず、局長通達にも反していると主張する。原告が局長通達のいかなる部分を指摘するものであるかは明らかではないが、局長通達は、建物、構築物等の存在する土地がその敷地としての利用のほかにこれと一体となって利用されているという客観的事実があるときに一体の特定施設とすべきこと及び特定施設の用に供する土地の範囲は、当該土地が道路、塀、垣根、溝等によって他の土地と明確に区別できるときは、原則としてこれによるべきことに言及しているものであって、前述のとおり、利用状況及び土地の範囲において、駐車場用地である本件土地1とは整備状況において明確に区別されていた本件土地2を本件土地1と別異に扱うことは、法に抵触しないことはもとより、局長通達に抵触するものでもないから、原告の右主張を採用することはできない。
四 よって、原告の請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 竹野下喜彦 岡田幸人)
別紙
物件目録
1 所在 港区南青山五丁目
地番 二三五番八
地目 宅地
地積 一五三・五五平方メートル
2 所在 港区南青山五丁目
地番 二六三番
地目 宅地
地積 四八七・五二平方メートル
(平成七年四月一一日分筆前のもの)